書籍と雑誌の電子化の日々2013年12月16日 12:38

このところ、書籍と雑誌の電子化に取り組み、一段落を見た。少し振り返ってみたい。

きっかけはいくつかあるが、一つは東北の大震災。ずいぶん、本が崩れた。数日会社から帰れず、ようやく戻ると、まさに本の雪崩。危ないのもそうだが、大切にしていた本のいくつかは、折れたり傷ついたり。少し執着心が薄れた。それと仕事柄、いつでもどこにでも行けるようにしておかないといけないかな、とも。

スキャン枚数
結局、電子化800冊、廃棄1800冊、売却1800冊、残り500冊くらい、と相成った。スキャナのカウンタは、26万枚。雑誌書籍意外にも、各種書類も電子化しているので、およそ、1冊あたり平均500ページくらいか。それにしても、雑誌が多いとはいえ、5000冊近く貯め込んでいたとは。

電子化するには、基準を決めておいた方がいい。こんな感じ。

1.電子書籍で買えるものは、電子書籍で買い直す
 すぐに買う必要は無い。再読したくなったときでいい。それまでは、Amazonを自分の書庫と思え。
 
2.電子化するのは、装丁よりも中身が大事
 床積では、結局必要なときに読めない。技術書参考書類はすぐに読めるように。
3.電子書籍もなく、古本にも出ておらず、紙質の劣化が進むものは優先的に電子化
 他人に価値がなくても自分にとって大切、という本はあるもの。
4.最終的に本棚は3つ。本はよく見える状態で。床積はなくす。
 部屋の間取りを見て本棚の数を決める。本棚に詰めすぎない。アクセスできないのは無いも同じ。

最初はあいまいでも、作業の過程ではっきりさせていく。そうしないと、終わりがない。

さて、次は道具立て。

書籍と雑誌の電子化の日々 ~道具2013年12月16日 13:30

電子化の道具。

1.ドキュメントスキャナ
2.裁断機
3.電子化書籍管理のソフトウェア


EPSON ES-D200
ドキュメントスキャナ。今は、EPSONのES-D200を使っている。2010年に導入。2世代前。つい最近、新機種が出た。


RICOH RI-630
老舗は、富士通のScanSnap。個人的には、PFUのラインナップの方が通じる。その前は、リコーシステム開発。一つ前は、そこのRI-630を使用していた。2000年頃の導入。当時は、個人で変える価格帯ではこれしかなかったように覚えている。SCSI接続。それから綿々と製品を鍛え、リーディングの製品となった。

機種交替は、SCSI接続が困難になったため。内部の読み取り部に傷が増え、スキャン結果に筋が目立つようになったため。ScanSnapの評判がよいのにメーカーを替えるのは、いろいろ試したい技術者の性か。複合機とおそろいにしたい気持ちも。
結果として、比較相手が古すぎるが、満足の性能。Amazonやヨドバシのレビューにはいろいろ書かれているが、必要な性能はクリアしている。それよりも、電子化には、スキルが必要。それは機械を替えても変わらない。うまくいかないのを機械のせいにするのは簡単だが、電子化はそれなりに奥が深い。

なお、厚手の表紙用にフラットヘッドスキャナもあると便利。ちょうど、複合機にスキャナ機能が付いていて重宝した。


DAHLE 200DX
裁断機。ダーレジャパンの200DX。折りたたんで、しまえるのが便利。裁断幅が180mmと広いのも魅力だが、実際には落とし穴も。
それこそ、2000年当時は書類をばらしてカッターで切っていたが、ある程度の量をこなすなら、入手性が格段に向上した裁断機を用意したい。


DocuWorks 7.3
電子化書籍管理のソフトウェア。FujiXeroxのDocuWorksを使用。スキャナを購入すると、ドライバとPDF文書を作るソフトウェアが付いてくるので、それだけで用は足る。ただし、電子化した文書を活用するとなると、電子文書管理ソフトがあると便利。DocuWorksは、老舗の部類。2000年当時、ドキュメントスキャナを導入時に、合わせて導入。このときは、ver.4。最新はver.8。使っているのは、ver.7。一世代おきくらいにバージョンアップしている。企業向けの機能拡張が中心なので、個人利用の場合は、新しいOSに対応するときくらいでいい。


DocuWorks付箋紙
たとえば、読んでいる途中で、気になる場所に付箋紙やメモを貼り付けることができる。図は攻略中のゲームの解説書だが、付箋紙を貼りながら攻略中。本の厚み表現があるので、およそのページ位置をパッと開くこともできる。


XDWフォルダ
ちょっとしたことだが、Windows8のフォルダでアイコン表示すると、書籍の表紙を確認できるのも便利。

次は、実践する。

書籍と雑誌の電子化の日々 ~実践2013年12月16日 14:33

やってみて改めて気づくのは、本、というか紙にはいろいろな種類があること。大きさ、厚さ、表面のすべすべざらざら感、劣化の度合い、等々。したがって、全てが同じ調子でスキャンできるわけではない。機械の性能は向上しているが、調整がいる。

スキャナの方も、処理経過によって状態が少しずつ変わっていく。給紙部位(分離パッドと給紙ローラー)の摩耗、紙粉の付き具合、読み取り部位の汚れ、等々。このあたりも見極めて、調整しながら作業を進める。


背表紙の裁断あと
裁断。
裁断機を使えば、15mm位は一度に断ち切ることができるが、本によっては、押しつけられたときにずれが生じ、上側は端まで5mm位で調整したのに、下側は10mm以上になってしまった、ということが起こる。背表紙が丸みのある製本では、表紙に近いところと中央部ではずれが生じる。そのあたりを見極めて、裁断の単位を調整する。背表紙が丸みのある本は、両表紙側と中央部の3つ以上に分割すると具合がいい。背表紙が平たいものでも、厚くしすぎない。図では、右が平らな背表紙の例。それでも少しずれる。左は、丸い背表紙の表紙側の例。ずれ幅が大きい。

分割するときは、製本する単位の切れ目にカッターを入れる。大きな紙を4枚(8ページ)や8枚(16ページ)単位で折って製本することが多いようなので、その区切りを見つけるとばらばらになりにくい。

苦手な紙。
・コミック雑誌の厚手でざらざらした紙。摩擦が大きいので重送(複数枚が重なって取り込まれる)が発生しやすい。給紙部位の摩耗も多くなるよう。
・非常に薄手の紙。プロセッサの仕様書が何冊かあった。丈夫だが、透けるような紙。厚さ2cm位なのに500ページ以上あるもの。薄すぎて、これも重送しやすい。
・大判で薄くてぺらぺらした紙。取り込みには問題が無いが、送り出したあと、紙が丸まってくしゃくしゃになりやすい。スキャナから排出されたら、すぐに手で取り出す。
・表面に細かい粉が付いている紙。フルカラー印刷の本で数冊あった。スキャナの紙を送る機構が滑って、絵が乱れる。あとで画像を確認し、取り直す。こまめに内部のローラーを掃除する。
・古くて劣化の進んだ紙。茶色く変質し、破れやすくなっているもの。手元にあったものでは、昭和22年発行、美濃部先生の新憲法(現行憲法)の解説書。戦後すぐで紙質が悪いせいもあるのだろう。それほど古くなくても、1980年代のコミックやコミック雑誌は劣化が進んでいた。

新憲法概論昭和22年


読み取らせ方。
毎回、同じページ数で読み取らせると、重送にすぐに気がつく。これも、8ページ、16ページといった製本の単位の倍数で読み取らせるのがよい。総ページ数は、8や16の倍数になっていることが多いので、読み取りの正確さを担保しやすい。最近の機種は重送検知機能が充実しているようだが、重送してしまうとリカバリが必要なのは変わらない。枚数は少なめの方がリカバリ作業は楽。個人的には、16枚(32ページ)単位でするようにしている。あまり小さいと作業時間がかかるし、大きいとリカバリ作業が大変になる。そのちょうどいい単位を見つける。会社でコピー用紙のスキャンをするような場合は、機種の上限に近い給紙でも問題ないのだろうが、本は一冊一冊状態が異なるので、欲張らない。

重送が多い場合は、枚数の単位を減らす。16枚を8枚、8枚を4枚、4枚を2枚、どうしようも無い場合は、1枚単位で。

いろいろやってみると、国内の本はほとんど、4枚や8枚単位である。カラーページとモノクロページの切替もこの位置である。洋書の場合は、必ずしもそうではないようだ。


分離パッドの摩耗
給紙部位の摩耗。
まとめてセットされたところから、一枚一枚紙を取り出す部分。EPSONの製品の場合は、分離パッドと給紙ローラーの2つからなる。交換の目安は10万枚。交換時期に確認したところ、給紙ローラーはそれほど変化は見られないが、分離パッドは大きく摩耗している。ピントが甘いが、左が新品、右が10万枚を経たもの。実際には、この部分が少しずつ削れることで、紙を取り込んでいる。手でこすってみると、少し削れるのがわかる。

この部分の状態により、きちんと取り込めるかが決まる。重送の発生頻度が上がってきたときは点検する。紙質によっては、目安よりも早く摩耗する。摩耗しきっていなくても、全体で一様に摩耗せず、ヒゲ状の部分ができていると重送しやすくなる。この場合は取り除くと改善する。分離パッドと給紙ローラーは、消耗品。その割に高価なのが玉に瑕。


紙粉汚れ
紙粉の掃除。読み取り部位の掃除。
紙を多量に処理していると、どうしても紙の粉が出てくる。これが、スキャナの読み取り部分に付くと、画像に線が入る。紙を送り出すローラー部に細かい粉が付着すると、滑る。ときどき、掃除機できれいにする。

製本で糊を使う。裁断後、背表紙の近くには、糊が残り、スキャナの読み取り部に汚れが付くことがある。小さいサイズの読み取り後、大きなサイズを読み取ると線が入るような場合、小さいサイズの本の糊が付着した恐れがある。ときどき画像をチェックして、少し濡らした布などで読み取り部をきれいにする。

最後に、まとめ。

書籍と雑誌の電子化の日々 ~まとめ2013年12月16日 16:51

地道で大変な作業。思い切って処分するのも選択肢の一つ。それができない場合は、本に埋もれて生活するか、覚悟を決めて電子化する。

本の整理と一石二鳥と言えなくも無い。確かに、不要の本はだいぶ処分できた。本について多くを学ぶこともできた。製本の仕方、紙質。雑誌が休刊に近づくにつれ、確実にページ数が減ること。部数減に対し、紙質を変えてコストダウンに努めること。等々。

巷の電子書籍のようにきれいにできるとは限らない。どうしても傾きは出るし、ピントがやや甘いページも出てくる。それでも、部屋の隅で1mほどの本の山の底に埋もれたままにするよりはいい。そうやって、活用の場を与えるに値する本や雑誌を吟味する機会になる。NASに入れておけば、寝転びながらTabletで読むこともできる。寝る前の読書にはよいかもしれない。

これからは、本を買うとき、紙と電子版を吟味する。紙の書籍は、読了後、本棚に安置するか、電子化するか、処分するか、都度判断することにする。このサイクルをうまく回せば、身軽でいられる。

できあがった、書籍類は、バックアップをAmazonのS3に送り、北米のどこかで凍りづけになっている。ある意味、本棚の本よりも手厚く扱うことになっている。