素粒子論2014年03月19日 22:08

このところ、素粒子についての本を読んでいる。

素粒子、物理の世界
学生のころ、手に入れていたのは、湯川秀樹らの新書。手頃に入手できる科学書としては、岩波の赤や青、講談社現代新書、ブルーバックスといったところ。「素粒子」は、湯川さんのはしがきの日付が1969年。「物理の世界」のまえがきが昭和39年。素粒子の章を見てみると、中間子の発見の後、粒子加速器が数多くの新しい粒子を見つけている最中の頃。


超弦理論入門、他
今回、手に取った主なところ。片山さんの「素粒子論の世界」のはしがきの日付は、1971年。上記の本の出た頃の研究の現場の様子を生々しく伝える。南部さんの「クォーク」の前書きの日付は、1997年。湯川さんの本の頃から、研究は進み、クォークモデルが登場し、素粒子の標準模型まで語られる。そして、大栗さんの「超弦理論入門」。あとがきの日付は2013年の夏。標準模型の先を探る。

通して読むと、実験と理論がお互いに牽引していくさま、模索の過程がよくわかる。湯川さんは、新書の最後に、「素粒子の方もまた、広がりを持っていなければならぬ」とし、「時空自身の量子化ということを、もう一度、考えねばならなくなるかもしれない」と述べつつも、「今それを論じるのは時期尚早であろう」と締めくくっている。その後、加速器実験が成果を上げ、理論もそれへの対応に集中する期間が続き、しばらくなりを潜めていた。それが、再び、弦理論や超弦理論とともに、新しい形で取り上げられていく。景気循環のコンドラチェフの波のようでもあり、半導体産業における牧本の波のようでもある。

なお、どの本も、湯川さんを伝える箇所では、湯川さんが好んで取り上げた李白の詩の一節を挙げる。「天地は万物の逆旅にして、光陰は百代の過客なり」。手元の漢和辞典によると、逆旅の逆は、迎におなじ。二字で宿屋。発想の源流は、荘子にあるという。これが、広がりを持つ素粒子、素領域、巡りめぐって超弦、につながっていくことの不思議。

そんな折、タイムリーなニュースが入ってきた。南極の宇宙マイクロ波背景放射の観測で、インフレーションに関連する重力波の痕跡を捉えたという。
この研究については、超弦理論入門でも少し触れている。


CP非保存と時間反転、素粒子を探る粒子検出器
少し前は、岩波の物理の世界のシリーズに夢中だった。巻に抜けがあるところを見ると、おそらく、まだ完結はしていないが、どうなることやら。
さて、「CP非保存と時間反転」は、2001年の発行。反粒子が少ないことから、CP対称性の破れ、その検証のためのKEK他の実験について触れる。「素粒子を探る粒子検出器」は、2007年の発行。ヒッグス粒子の検出を発表したCERNの加速器を初めとする、素粒子の実験装置を概観する。テーマを絞って、簡潔でわかりやすい、との印象だが、全体感をつかめる上述の本と併せて読むのがよかった。

それにしても、人の一生ほどの時間のうちに、これだけの進展があるとは。湯川さんの本が出たのが、先の東京オリンピックの頃、次の東京オリンピックの頃には超対称性粒子が発見されているかもしれない。

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