今日は口数がすくない2014年08月13日 08:02


今日は口数がすくない

2008年から2011年にかけ、岩波の「図書」で連載があった。最初は、米軍の置き土産のペーパーバックの話から始まったが、最後の方は「小説を書くこと」をめぐる話になっていた。それでは、ということで、著書を探してみると、近作はエッセーが中心で、小説はことごとく版切れ。古書で見つけたのが、本作。7つの短編。男女の物語。

短い文をつなげていく文体が心地よい。仕事柄、小難しい内容をわかりやすく伝える必要から、一文は短く、を心がけているので、文体の選択にまず共感する。小説には向かないような気がしていたが、実例を見せられると、さすが、と納得せざるを得ない。

長い文の場合、どう決着がつくか予断を許さない。心の中でいったん留め置いて、句点を待って、全体を再構成し、浮かび上がったイメージを先に送る。短い文の場合、いったん留め置く過程を経ず、どんどん送り、その先でイメージができあがっていく。読み手の感覚もずいぶん違う。

改めて、Amazonを探すと、Kindle化が進み、小説の入手性は良くなっている。ここは素直に喜んでおく。