IceCube 南極のニュートリノ観測装置2014年11月25日 07:31

IEEE Computer2014/09号。特集は、天文学における計算機科学(Comupting)。膨大なデータを扱うので計算法に関する記事が多いが、米国が中心となって進める南極のニュートリノ観測装置IceCubeの記事が目に留まる。

※IceCubeのサイト

IceCube 南極のニュートリノ観測装置

国内では、ノーベル賞を取ったこともあり、ニュートリノ観測というと、神岡鉱山のカミオカンデの話はよく目にするが、IceCubeのほうもなかなか面白い。南極では、氷の層が地表から3000m近くあるが、そこに穴を掘り、奥の方の1500m部分にチェレンコフ光を観測する光センサを設置する。穴の数が86、センサの数が5160、一本あたり60のセンサを17m間隔で配置する。それぞれの穴は、125m間隔で、ほぼ蜂の巣状に配置するとあるので、約1km平方の設備になる。スーパーカミオカンデは、直径約40m、高さ約40mの円筒形だから、ずいぶん規模が大きい。
※カミオカンデについては、「岩波講座 物理の世界 素粒子を探る粒子検出器」による 

IceCubeとカミオカンデを比べると、両者の発想の違いがわかる。カミオカンデの方は、中を純水で満たして、高精度の光センサを配置し、最初に得られるデータの質をできるだけ高めようとしている。IceCubeの方は、天然の氷層を用いているので、不純物が多く、年代ごとに厚さの異なる層をなし、年に9mほど海に向かって移動する。観測される光はこれらの影響を受けているが、氷層を徹底してコンピュータシミュレーションすることで、意味のあるデータに精製する。

観測対象の違いもあるだろうし、適当な鉱山の跡地があったカミオカンデと、南極観測態勢が整っていたIceCube、両者を取り巻く環境の違いもあったと思われる。それにしても、ひとつひとつの装置に心血を注ぐカミオカンデに対し、データを力業で解析してしまおうとするIceCubeと、考え方が両極端なのは面白い。

IceCubeの観測データは、日に1TB程度になる。ここから105Gbを南極にある計算機で選抜して、NASAの衛星データ伝送設備を用いて北米に送り、リアルタイムに近い観測を実現する。NASAの設備が利用できるのも大きな特徴。