Vacuum Diagrams2015年11月22日 22:45


Vacuum Diagrams

Amazon.comの履歴を見ると、2009年11月に購入とあるので、6年越し。

Stephen Baxter(スティーブン・バクスター)のXeelee(ジーリー)に連なるシリーズ4作を補完する、1980年代後半から、1990年代半ばに掛けて執筆された中短編集。初出は1997年。4作の舞台が登場するほか、前後の出来事が語られる。4作の内、2作ほどは読んでいないと背景がわかりにくいかも。

・Raft (1991)、天の筏(ハヤカワ文庫1043)
・Timelike Infinity (1992)、時間的無限大(ハヤカワ文庫1097)
・Flux (1993)、フラックス(ハヤカワ文庫1129)
・Ring (1994)、虚空のリング(ハヤカワ文庫1143、1144)

読んだのは、Timelike InfinityとRing。Ringは大河ドラマ風なところがあり、その前後が気になる人は、本作で少し報われる。本作では、各編を通して、宇宙の将来の果てを展望するが、時が意味をなさなくなるような静けさの中へ終えるので、読後感は少し寂しい。人間の愚かさも多数描かれるが、それでも、人の、前に進もうとする力をどこまでも信じている作者の姿勢が窺え、共感しつつ、励まされる。

それにしても、この時期にダークマターについてこれだけの見識を持った物語を作れたと言うことには驚く。物語を作るための無理はいくつもあるものの、語られる理屈づけや解説は、最近の解説書で述べていることと大きく変わらない。Ringを読んだ当時、裏を取ろうと物理の解説書を探しても納得できるものがなかったことを思い出す。

※解説:今なら、数理科学2014年9月号「重力の謎と魅力」の「多彩な天体現象と重力」の記事、など。

翻訳は早川から2分冊で出ていた様子。
・プランク・ゼロ(ハヤカワ文庫1427)
・真空ダイヤグラム(ハヤカワ文庫1430)。

バクスターは、今でもコンスタントに新作を出しているが、このところ翻訳は出ていない。国内は、ジャンルの細分化が進んだせいか、時の人でないと、翻訳は出にくくなっているのか。

※ハヤカワ文庫の番号は、SFマガジン2015年8月号のハヤカワ文庫SF総解説による。