宇宙をめぐる法の話題 - ジュリスト2017年5月2017年12月28日 16:50


宇宙を巡る法の話題

年末になって、金井宇宙飛行士がバイコヌールからISSに向けて旅立ったり、H-IIAの打ち上げがあったり、新しい年にははやぶさ2がいよいよ目的地に到着するとの話題が出たり、そんな中で頭に浮かんだ疑問のいくつかが解説されている。

ジュリスト2017年5月号、特集は、「宇宙ビジネスの活性化に向けたルール形成」。2016年11月の「宇宙活動法」と「衛星リモートセンシング法」の成立と公布を受けてのもの。おおもとの「宇宙条約」は1967年に発効して、各国が法整備を進める中、ようやくとのこと。民間でのロケット開発が進み、重い腰を上げたといえる。

・P25、有人のロケットは当面許可しない、実質的な検討も先送り
海外の動向を踏まえつつ、研究を進めるするというところ。今、やりたいと名乗り出ても、法律が未整備だからと止められる。

・P27、「宇宙条約」6条は、「自国の宇宙活動について国が国際的責任を有し、」
止める根拠はこのあたり。

・P47、「宇宙条約上、天体それ自体の所有は否定されているという解釈が通説」
ただし、
「宇宙条約上、また国際法上、宇宙空間において採掘した資源の所有は認められうる」
と考える人が多そう。

・P49、米国の商業宇宙打ち上げ競争力法(CSLCA)では、「本章の下における小惑星資源又は宇宙資源の商業的回収に従事する米国市民は、獲得した小惑星資源又は宇宙資源に対する権限を有する。」と定めている。
実際の技術的、経済的能力を有する国がそうするなら、その方向で進みそう。

……

「霞ヶ関インフォ」では、「脆弱な消費者の保護と子どもに対する攻撃的広告」と題して、各国の取り組みを紹介する。

・ドイツ;「不正競争防止法で、特に児童や青少年の取引上の経験不足を利用するような競争行為は不正競争行為にあたると明示」
・スウェーデンやノルウェー;「12歳未満の子どもに向けたいかなるテレビCMも禁止」
・ベルギー北部;「子ども向け番組の5分前および5分後のCMが禁じられている。」
・オーストラリア;「未就学児向けのテレビ番組でのCMが禁止されているという。」
・日本;「我が国では、今のところ子ども向け広告に関する特別な法規制は存在しない。」

玩具を売るためのアニメもあったりするので難しい。それでも、小学生もスマホを持つ時代に、ガチャを際限なく引かせるような広告が跋扈するようなら考えていかなければならないのかも。

……

「労働判例研究」では、東京メトロ事件を取り上げる。

これは、東京メトロの従業員が、電車内の痴漢行為により東京都公衆迷惑防止条例違反で略式命令を受け、社内の懲戒委員会が諭旨解雇処分を決め解雇されたのに対し、解雇処分無効を主張した事件。

東京地裁は、勤務態度が優良であったこと、示談の成立に努めたこと(不成立)、マスコミ等による報道がなかったこと、社内手続が起訴の有無のみを判断基準とし多様な観点を考慮していないこと、懲戒委員会で弁明の機会が与えられなかったこと、等から主張を認めた。

個別の事情を吟味した結果とは言え、鉄道事業者にはなかなかに厳しい。特に迷惑行為撲滅の旗振りをしている最中であるだけに、処分が甘ければ世間から厳しい目を向けられる。また、報道やSNSでの拡散があれば、解雇は有効になる、というのも何か違う。

答えが出ないのも裁判、とわかっていても、考えさせられる。

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