債権法改正の要点 - ジュリスト2017-102018年09月01日 20:16


ジュリスト2017-10

特集は、「債権法改正の要点」、民法1100条ほどの規定のうち、三分の一ほどを改めるもので、大改正。法制審議会に部会を設けてから8年。施行は2020年を目指している。新連載の「知的財産権とビジネスの種」では、人工知能の生成した「もの」の扱いを取り上げる。連載「不動産法の最前線」では、「民泊をめぐる問題点」を整理する。

債権法の改正では、社会や経済の変化に対応するものとして、主に5つを取り上げるという。
1) 時効;時効期間の統一化
2) 法定利率;法定利率の引き下げと変動制の導入
3) 保証;公証人による保証意思確認手続の新設
4) 債権譲渡;譲渡制限特約の効力の見直し
5) 定型約款;規定の新設

「保証」は、ときに社会問題にもなる「保証人」の問題。友人の会社の保証人になったために破産に追い込まれる、などの事例。公証人を立てて説明と意思確認を尽くす、という制度になり、経営者などのプロ以外は、対象でなくなるだろうとの解説。

究極的には、資金調達手段の多様化が進んで解決されるべきものか。「人」でしか信用を測ることができなかった状況は変わりつつある。

「請負」についても手が入る。請負人の契約不適合責任について。改正前は、請負人の担保責任としていたもの。建てた建物が、設計通りでないとして、代金の支払いを拒むなどの事例。今の運用を変えないとされるが、裁判で争ったときのゆくえは、少々予断を許さない、とも。

「定型約款」、これがいちばんもめたという。結果、規定は設けたが、裁判等でどう転ぶかは、事例を積み重ねてみないと、というところ。

しばらくは、大きな不利益がないか、細かい字は大変だけど、ひととおり目を通してから契約する、という姿勢を維持したい。「入学者納付金はいかなる理由があっても返還しません」、みたいな条文には、引き続き要注意。

ほか、用語の改廃も気になる。「瑕疵担保」、「錯誤無効」、などは過去のものに。お世話になった用語で少し寂しい気も。弁護士が勉強しているかの「ものさし」になる、と弁護士の方の弁。

さて、「人工知能の成果物」。少し触れているが、機械学習の「学習済みモデル」なんかは難しい。それ自体、流通の予定があるが、機械側の自律性が高く著作物とは言いがたく、特許の対象とも言いがたい。あらかじめライセンスで縛ることはできるだろうが。有償のものを勝手に複写して利用した場合、どう判断するか。再学習でモデルが変容した場合も考えるとさらに難しい。