トマス・アクィナス「神学大全」 ― 2019年06月29日 11:03
「神学大全」の紹介や要約ではなく、論集。13世紀の神学者の思想、考えたことが、現代の私たちにとって、「挑戦の書」である、という立場で論じていく。
読書中、頭から離れなかったのは、キリスト教世界の内なる議論にとどまるのではないか、現実の多様な価値観がある中でどこまで説得性を持つのか、ということ。「神」は、「近づくべきもの」「愛の対象」との姿勢に、どこまで得心がいくのか。
「神」や「仏」、人によって思い浮かべるものはそれぞれ。「山の神」「海の神」「地の神」ではないが、お世話になっているけど、近くて遠いもの、いざとなると猛威を振るうもの、おこぼれに与るもの、畏れるもの、隔絶したもの、という捉え方だと、共感を得にくい。
人とゴールを同じくする愛が存する、ことにリアリティを感じるか、そこが分かれ目。そうであれば、断絶を超える存在の意味が大きく現れる。
第七章、法の支配における「共通善」を論じるが、近代以降では「憲法」にその役割を期待している、と理解している。憲法判例を読んでいるとにじみ出てくるものがある。素の社会契約説のままではない。「憲法」に込められた思いは、各国それぞれではあるけど。
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