ジュリスト2018年9月 - 労働法と独禁法の交錯2020年07月12日 21:33


ジュリスト2018年9月

特集は、「人材獲得競争と法」。公正取引委員会が2018年2月にまとめた「人材と競争政策に関する検討会報告書」を巡る議論。スポーツの世界の話もおもしろいが、フリーランスで働く人、独立自営業者にまつわる話が、働き方改革に絡んで切実。

フリーランス、独立自営業者は、事業者であり、企業と対等な立場でビジネスをする。同じ個人で働いていても、企業に雇用されている労働者とは立場が異なる。力関係の違いから来る不当な扱いに対抗するには、独禁法をはじめとする競争法の活用が必要になる。

「検討会の目的は、働く個人を守るために独禁法を適用することです。全国には6700万人の就業者がいて、380万社の企業があります。労働法も競争法も何も知らない人たちが健全に働いていくための議論なので、限られた専門家だけが内容を理解していて、その人たちだけが独禁法を使えて、あとは裁判で、では、本来の目的を果たさない(P.28)」

実際、公正取引委員会が行った、フリーランサーに対する調査(P.31)は、なかなか厳しい実情を示す。
・代金の支払い遅延が23%
・代金の減額要請が16%
・著しく低い対価での取引要請が30%
・成果物に拘わる権利等の一方的取り扱いが18%

裁判に持ち込めば勝てるにしても、費用も時間も賄えない。

一方、

「終身雇用で働いてきた正社員の3割は「契約書なんて結んだ記憶がありません」と、人材サービス産業協議会が2017年に行った「雇用区分呼称に関する休職者調査」では答えています(P.35)」

正社員がフリーランサーと仕事をする上でも、自身がフリーランサーに転ずるにおいても、契約や法律の立て付けの理解を深めないと、思わぬトラブルや不利益に遭遇する。法の整備はこれからであり、自衛もまた必要。

「時論(P.74)」では、「働き方改革」関連法案の成立を受け、実務への影響を論じる。

法案の成立により、これまでバラバラであった、パートタイム労働、有期労働、派遣労働について、いわゆる正社員との間で、統一的な均衡・均等待遇ルールを設けることになる。

ここで、「名目と実質の離れた手当、趣旨が不明瞭な手当(P.75)」が多数ある実態が問題になる。おそらく労使の長年の交渉や妥協の産物であろうこれらが、正社員とそれ以外の不合理な差別の源泉となる。ここでも問題を放置、先送りしたツケを払わされる。

昨今のリモートワークの導入でも議論が噴出したが、複雑化した仕組みを放置することで、変化や適応を鈍らせることが、競争力減退や差別や格差の増長の一番の理由ではないか。外圧に寄らずに、普段から断捨離したいもの。それができないのなら、新陳代謝。

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