江戸思想史講義2023年03月15日 10:02


江戸思想史講義

江戸時代の思想家を取り上げた講義をまとめて一冊としたもの。儒学の流れを汲むものから、国学へと流れるものに至る。特徴的なのは、思想家それぞれの考えを紹介することよりも、その思想を生んだ背景、同時代への影響、遠く離れた明治期以後への影響を語るところ。同じ考え方が、時代により異なる捉え方をされるさまが面白い。

儒学については、科挙を伴い国定の学問とならなかったことから、中国や朝鮮半島とは毛色の違う進化を示すさまを教えてくれる。逆にここから見えてくる本流とされた朱子学の姿がある。四書五経あたりを読解する助けにもなる。

共感という点では、徂徠。「こぶやなぎの性質にしたがって曲げものを作るとはいえても、曲げものになることがこぶやなぎの性の自然必然的な結果だというのは間違いだ」(P.212)の件は、徂徠が、人間の多様性の視座に達していたのかも、と思わせる。朱子の「性の自然にしたがえば、道あらざることなし」が、結果を伴わないのは努力が足りないせいだ、という、人の多様性を見ずに一面的な判断に陥りやすいのに対し、希望を抱かせる。

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