The Elder Gods - Book One of the Dreamers2021年09月12日 08:10


The Elder Gods

David and Leigh Eddings夫妻の最後の長編。4分冊の1冊目。

荒れ地に住む異形のものたちが、神々の治める土地に攻め入る動きを見せ、神々は自分たちに課せられた制約を補おうと、自らの地に住む海賊や傭兵といった荒くれ者たちを戦いに誘う。1冊目では、最初の戦いの顛末まで。

Eddings夫妻の著作では、ベルガリアード物語とマロリオン物語はハヤカワのFTで。その次は、翻訳を待てずに、まだ、オンライン書店として育ち盛りのAmazon.comでThe EleniumとThe Tamuliのシリーズを手に入れ、通勤の電車の中でむさぼり読んだ。

これらは、いわゆる英雄譚で、主人公たちが成長し、困難を乗り切る様を楽しむ物語。個人的には、日本のラノベあたりにもそれなりの影響があったのでは、と思うところ。対して、今回のThe Dreamersのシリーズは、神々が表に出てくる。超常の力を振るう彼らには、ちょっと感情移入しにくい。そのあたり、Amazon.comの評も辛口のものが多い所以か。

Eddings夫妻が、おそらく最後の長編になることを意識しながら、なぜ神々を主役の位置づけで描こうとしたのか、興味のあるところだが、この先明らかになるのかしらん。

水玉さんの描く、きゆづきキャラ2021年08月30日 16:42


水玉さんの本

ふたたび、水玉さんの本。ワンフェスのワンダちゃん、SFまで10万光年以上。ページをめくっていくと、きゆづき作品への言及がちらほら。

ワンフェスのワンダちゃん
p145;ニジュクとサンジュ;ワンフェス2008年冬
p153, 155;ノダちゃん;ワンフェス2010年と2011年の冬

SFまで10万光年以上
p163;2000年9月号掲載分。おそらく、この頃嵌まっていた作品の列挙の中にGA。他には、らき☆すた、あずまんが、けいおん。まあ、そういう仲間だよね、という謎の納得感。

これで終わりにしようと思ったのだけど、アスプリンのマジカルランドシリーズを大人買い。どれも古書店だけど、全巻とはいかないまでも結構揃う。ハヤカワさんも、これらに限らず、電子化してくれるとうれしいんだけど。

緋色の研究2021年07月16日 10:55

事件簿は、米国の著作権が切れていないので、緋色の研究。英文と訳文の読み較べ。

A Study in Scarlet

英文は、引き続き、Standard EBOOKSから。

緋色の研究

訳書は、光文社文庫から。2006年の訳。日暮さん。現代の日本語として、これまで読んできたものの中で一番自然なもの。本文は、Kindleの目盛りで90%くらいまで。注釈と解説がつづく。注釈は充実したもの。ちょっとしたホームズ辞典。

一応、長編に位置づけられるが、分量としては、最後の挨拶の7割ほど。うち、半分ほどが事件の背景にある過去の描写なので、ホームズの活躍としては、短篇2~3編分ほど。ホームズ自身も単純な事件と言っているし。

それでも、短篇と違ってホームズはきちんと説明してくれるし、二人のなれ初めや、若かりし頃の姿の描写など、短編集を読んだ後では、なおのこと、興味を惹く。

最後の挨拶2021年07月02日 19:58

冒険、回想、帰還、につづいて、最後の挨拶。英文と訳文の読み較べ。

His Last Bow

英文は、引き続き、Standard EBOOKSから。

最後の挨拶

訳書は、創元推理文庫から。2014年の訳とあって、これまででもっとも自然な読み口。ちょっと難しい単語を用いて雰囲気を出そうとしている節が少々。訳者の深町さんは、それなりの年代なので、自然と出てしまうか。末尾に(Kindleで95%くらいから)、戸川氏の解題と、日暮氏の解説。

英語版では回想に入っていた、The Cardboard Boxを収録。

物語の方は、ホームズもワトソンもやや説明口調が多め。その分わかりやすいとも言えるが、これまでのキレの良さがやや影を潜める。末尾の「最後の挨拶」は、ちょっと変わった書き口。前半、歴史小説のような展開。ドイルは、こちらが自分の本来の姿と主張しているようでもある。

Bruce-Partington Plansの事件では、ロンドンの地下鉄が活躍。ちょっと地上に出ている部分があって、丸ノ内線を知っているとイメージしやすい。現在の路線図と見比べると、London BridgeとAldgateがつながらない。London Bridge対岸のMonumentだと、うまくいく感じなのだけど。

短編集は、もう一つ、事件簿、があるが、こちら、米国では、著作権満了が2023年ころ、ということで、Standard EBOOKSでは未収録。Amazonで見ると、いろいろあるが、信頼ある出版処で、以前紙で読んだPenguinは少々お高いが、HarperCollinsなら300円くらいと、それほどでもない。まあ、あと少し。待ってみるか。

空き家の冒険 - シャーロック・ホームズの帰還2021年06月14日 20:27

回想につづいて、帰還の英文と訳文の読み較べ。

シャーロック・ホームズの回想

英文は、引き続き、Standard EBOOKSから。

空き家の冒険

訳書は、岩波少年文庫。訳文の印象とは異なり、意外と最近で2000年の刊行。Kindleの電子書籍で。13編中、5編の収録。ホームズが帰還する表題作の他は、血なまぐさいもの、政治的なもの、女性が乱暴されるもの、などを除いた選択か。

・空き家の冒険
・ノーウッドの建築業者
・六つのナポレオン像
・三人の学生
・金ぶちの鼻めがね

訳文は、こちらも直訳調。少年文庫とあって、漢字表記を抑えてかなが多い。読んでいて、これという違和感はないが、やや堅苦しい感じ。2000年の刊行とそう古くないが、訳者の林氏の晩年の訳とあってか。

少年文庫のターゲットは、小学校高学年から高校生くらいだろうか。言葉は時代とともに変わることを考えると、20年に一度くらいは改訳して、その親の世代くらいの訳者のものを読ませてあげたいところ。

少年文庫版には収録されていないが、自転車乗りの話の冒頭、1894年から1901年の間は、忙しく充実した日々、とある。他方、回想のマスグレーブ家の話の中で、ホームズは1880年頃の緋色の研究の頃は、そこそこ名も知られ人脈もできていたが、そこに至るには長い期間を要したとある。探偵業を天職と意識したのが大学在学中だから、おそらく30歳前後。すると、帰還の話は、40台後半~50台の話。その割には、アクティブな活躍を見せる。

また、これも少年文庫版には収録されていない編(スリークウォーターバックの失踪)だが、警察犬のはしりのような活躍もあって、この時代の捜査手法の進展を感じられる。

山海経(せんがいきょう)2021年05月18日 15:02


山海経

せんがいきょう、ないしは、さんかいけい。1973年刊のシリーズものからの単行本化。新書と文庫の間くらいの判型。中国の古典を読んでいると、時折、参照されるのでどんなものかと。

全部で18経。うち最初の5経が五蔵山経で、2/3程の分量。洛陽の周辺の記事。どの方角のどのくらい先にどんな山があって、採れる鉱物、草木、動物を列挙する。ときに、神とよぶ、その地の主と言えるような存在に触れる。戦国時代以前の成立ではないかと。

次いで、以遠の記事を収める、海内経と海外経が8編。さらに、より遠くの記事を収める、大荒経が4編に、海内編1編。これらは、地名と来歴、その地に住む人物(といっていいのか不思議な存在)について示す。五蔵山経より少し後の時代の成立の様子。

解説に、絵図の説明文ではないか、とあるが、そんな感じで淡々とした文がつづき、読みやすいものではない。清代の刊本からの挿絵が豊富にあり、想像を補ってくれるのが幸い。儒教や道教の広まる前の中国の、素朴とも言える世界の見方の一端を教えてくれる。索引があれば、中国古典を読む際のハンドブックとして重宝するのだけれど。

シャーロック・ホームズの回想2021年05月11日 14:18

冒険につづいて、回想の英文と訳文の読み較べ。

回想

英文は、引き続き、Standard EBOOKSから。

シャーロック・ホームズの回想

訳書は、今度は、早川書房から。2003年版。Kindleの電子書籍で。

Amazonの商品説明では、12編収録とあるが、実際は11編。英書だと2編目に来るThe Cardboard Box(段ボールの箱)は、ちょっと猟奇的な内容なので、収録する版と別にする版がある。早川は収録しない方を、原書にしているようす。有名なライヘンバッハの滝の事件が最後に来る集。

訳文は、英文の構造に沿ったもの。正確さを意識した文章。訳語の選択も、そんなに引っかからない。ただ、その帰結として、日本語の文章としてみると、ちょっと違和感が出てしまう。19世紀末頃の英文自体が古めかしいせいかもしれない。ある意味、これはしかたがない。

最終編の「最後の事件」は、語り口から、それまでの編とは明らかに異なる。ドイルもさすがに力を入れて書いたと思わせる。残念ながら、努力は報われず、続編を書くことになるのだけど。

末尾に、解説として、冒険、回想の出版を巡るドイルの事情が説明されている。後世に読み継がれるかどうかは、文学作品としての高尚さとは相関しない、ドイルには悪いが、それを実証してしまっている。昨今の小説でも、意外と、なろう発とかの作品の方が、100年経っても読まれているかも。

TPPと法改正 - ジュリスト2019年2月2021年01月18日 07:38


ジュリスト2019年2月

特集は「TPPと法改正」。著作権や商標権まわりを扱う。

著作権の保護期間を70年に(P.23)。
主張していた米国がTPPから離脱したが、凍結せず、そのまま立法化。EUとの交渉で合意していたからかも。保護期間の最終日は12月31日。暦年主義で、翌年から起算。

配信者等に対する二次使用料請求権は、TPP11の発効に伴う改正法で付与(P.33)。
とはいえ、ダウンロードした音源は、約款で配信を不可とするものが多く、配信業者はレコード会社から直接入手することが多い。インディーズレーベルなどが主な対象となりそうだが、配信一覧の管理がされておらず、課題。

著作権違反の非親告罪化(P.34)。
対象はデッドコピーに該当するものに限定(P.36)。従来も告訴なしで操作が行われた例が存在(P.38)。裁判では、検察官が告訴状の証拠調べを請求しないと区別がつかない(P.39)。悪質な事件なら告訴が得られるはずであり、今までとあまり変わらないか。公訴権濫用のケースが出てくるかどうか。

判例速報では、マリカー事件の地裁判決(P.8)。
不競法についての請求で救済されるとし、著作権法についての判断はせず。使用許諾を誤認させるとして、使用差し止め等を認める。

連載「新時代の弁護士倫理」。
米国には、法廷侮辱罪など、弁護士にも訴訟上の制裁があるが、日本にはそのような制度はない(P.61)。懲戒や、相手方からの損賠は請求されうるが。高い行動規範が期待されている。

時論「日本における「成年」制度の成り立ちと社会的意義」。
20歳、というのは、1876年(明6)の太政官布告に始まる。この布告は、なんと、大宝律令ないしは757年の養老律令によるという(P.79)。これら律令の運用は、平安時代には形骸化。江戸の頃は、地域ごとに、地域の事情に合わせた運用。明治になり、20歳と決めたものの、世間一般の認識としては、徴兵年齢としてのもの。成人年齢として定着したのには、戦後、成人の日の果たした役割が大きい。20歳で成年、というのは、意外と、大層な根拠はなく、最近になってからのもの。

最高裁 時の判例。当たり馬券の払戻金は、雑所得か一時所得か(P.96)。
ソフトウェアによる機械的な売買ではないケース。それでも、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」と認められ、雑所得と判断。偶然性の影響を減殺するために長期間にわたって頻繁に馬券を購入する、態様が認められる。

経済法判例研究会、ガチャの景表法違反による課徴金納付命令(P.99)。
「窮極進化」の対象が一部なのに、「進化」を混ぜて、紛らわしい表示。「ガチャ」商法極まれり。

労働判例研究、「ベネッセ顧客情報漏洩刑事事件」(P.119)。
IT業務の請負が、4段にわたる。漏洩を起こしたのは、最後の4番目の請負会社の従業員。事件はともかく、これでセキュリティを確保しようというのには、無理がある。世間はようやく、DXだ、セキュリティだと、声を上げ始めているが、こんな契約や体制では、中身は伴わない。