知の構築とその呪縛 ― 2014年03月30日 00:18
科学的であること、とは、客観的世界と主観的意識を分離することである、という、科学を牽引してきた根底にある考え方「知覚因果説」が、現在の私たちの不安の根源にあり、これを時間を掛けても克服していかなければならない、と説く。ここでいう不安は、自身の肉体を含めて自然世界が徹底的に死物化され、人の心のみが取り残されてばらばらに散在するに至る、ことからもたらされている。
と、大筋を捉えたのだが、今ひとつ、実感がない。著者の問題意識にどこまで共感できるか、で印象は大きく変わるのだろう。得心がいかない理由を顧みると、「知覚因果説」的な思考法を、現実を規定している考え方と捉えるか、便宜的な思考装置と捉えるか、の違いにあるように思う。後者と割り切って科学とつきあっていると、違和感を覚えずに済んでしまうのかも。
本書は、元々は放送大学の教材であり、それが文庫化された。放送大学の教材は、それなりに高価なので、このように普及版として出してもらえるのはありがたい。
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