身分制社会論2014年10月31日 18:15


身分制社会論

朝尾直弘著作集の第七巻。身分制社会論。士農工商、実態は士とそれ以外、加えてそれらから排除された賤民層について論じる。

江戸時代の身分差別というと、幕府から強制されたと習ったように覚えているが、実態は、自立を強めていく庶民層がまとまりを強めていく一方、仲間内に入らない人を疎外する動きがあり、それを幕府が追認し制度化していった側面もあるという。これは現在の私たちにとっても、自分たちの問題であることを教えてくれる。今は、移動も自由であるし、個人の技量で職業も選べるが、ヘイトスピーチをする人が現れたり、米国では富裕層でないと住みにくい条例を定める地域が現れたり、と、差別につながる動きは常に身の回りで生まれる。

武士とそれ以外の身分との行き来についての論文も面白い。江戸も後ろに行くにつれ、戦がない一方、藩の財政難が進み、足軽などの層を削り、必要な場合は臨時雇用に頼るようになる一方、複雑になる経営や産業育成のために技量のある人物の登用や財力で武士の身分を買い取る動きが進む。近年の企業がリストラを進め、非正規雇用を活用する一方、優れたベンチャー企業を買収して人材を取り込む様、新興企業が資金にものをいわせて由緒あるブランドを獲得する様に似ている。江戸のこのような新しい人の層は、改革の必要を感じ、明治維新につながったという。歴史に学ぶとするなら、今、足下で進む人の動きも、次の時代の胎動となるのかもしれない。

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