王書2014年12月03日 10:32


王書

ペルシャ、今のイランの古の王と英雄たちの物語。書かれたのは、日本の平安時代の頃。ササーン朝ペルシャがアラブの勢力に滅ぼされてから300年ほど後。アラブに服さない周辺部でペルシャ高揚の意図を持って書かれた、と解説にある。

収められているのは、全体の四分の一ほど。文庫で350ページほど。王たちの在位は数百年を数え、神話の世界。ギリシャの神話とは異なり、神が表に出てくることは少ない。その点、中国の史書に親しいが、反対に倫理が関心に上ることも少ない。とにかく、圧倒的な戦いの描写、煌びやかな富の描写が目を引く。他方、どんな英雄たちも死により無に帰す、一種の無常感が通底する。

近年のファンタジーや伝奇ものには、世界の神話に題材を取るものも多いが、ここはまだまだ未開拓。まだまだ、面白い話が埋もれている。