東山時代における一縉紳の生活2015年01月11日 14:14


東山時代における一縉紳の生活

本書は、近世史や中世史の本を読んでいると参考文献として登場。青空文庫に収録されている。Kindle版は、上のように表紙も題字だけでシンプルなもの。

奥付によると、初出は1917年とあり、用字はそれなりに古く、今の本と違って章立てもなく、少々読み難い。目次を見ても、表紙、本文、最後のページ、のみ。タイトルの「縉紳」は、高貴な人のこと。この場合は、貴族、公家。

記述は、三条西実隆の実隆公記に依りつつ、室町時代中期の中堅どころの貴族の日常を描く中で、時代の実相を明らかにしようというもの。三条西実隆の活躍した時期は、およそ、応仁の乱の前後から、信長が表舞台に出てくる少し前まで。戦国大名が割拠し、荒れすさんだ世の中という先入観を、いやそうでもない、人びとはそれなりの生活を営んでいた、ことを示そうとする。

社会のシステムは壊れかけており、法が定めた関係が機能しているというよりは、その関係が機能しているときに生まれたお互いの利得の関係が続いているイメージ。そこに新しい勢力が登場し、関係を置き換えていく。有力者の入れ替わりだけではない。たとえば、役人が担っていたであろう中央と地方の連絡や通信の役割は、僧侶や連歌師が果たしていく。登場人物の入れ替えはあるが、全体としての有機的な関係は崩れない。こういうときこそ、人の縁がものをいうことが切に伝わってくる。もともと共同体が持つしなやかさが発揮された時代、というところ。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://c5d5e5.asablo.jp/blog/2015/01/11/7535927/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。