歴史と人物2017年03月19日 14:31


歴史と人物

明治の終わりから大正期に掛けての論文。タイトル通り、歴史上の人物を挙げて、その人となりと背景をなす社会を描き出そうとする。

人物選は、今の基準だと必ずしも馴染みある面々ではない。鎌倉から室町に掛けての人物が多い。一人あたりの分量も結構異なる。人物評とは別に、「朝敵」「成上り者」とひとくくりに論ずるものもある。また、冒頭に「史的人物の批評」の論を置き、物語に語られる人物像と歴史の取り上げる人物像の違いを明確にする。この点は、当時としては斬新であったのかもしれない。

今読むと、資料の少ない中、冒頭で定めた指針に基づき、客観的たろうとして苦心する様が読み取れる。また、世情を慮り、言葉を憚る様子も見て取れるが、逆に言うと、当時の世情を浮かび上がらせてもくれる。最後の「成上り者」は、約100年と少し前、明治の終わりを迎えての一文だが、現在と驚くほど問題意識が似ていることにはっとさせられる。