ハイゼンベルクの顕微鏡2017年10月20日 10:17


ハイゼンベルクの顕微鏡

重力波という微小な現象の測定の可能性について、不確定性原理に基づく限界値の突破と、さらにその先、不確定原理そのものを見直す議論について、不確定性原理を提唱したとされるハイゼンベルクとその周辺から時代を追って説き起こす。2006年の刊行。重力波観測装置はまだ建造中の頃。

途中、第二次大戦前夜、世情に翻弄される科学者たちの描写など、本筋からは逸れる記述がそれなりにあり、少し印象はばらける。それでも、抽象的な議論をなんとか読者に届けようという試みは、なんとか成功しているか。研究の要にいる小澤正直氏に取材できていることも大きい。

印象が一番変わったのはアインシュタイン。一般書では、量子論を頑なに拒んだ、といった論評をされることが多いが、疑問に対して中途半端にせず、徹底的に疑うことによって、かえって量子論を育てた側面が大きいことが改めてわかる。優れた論争あってこその進歩。

さて、あとがきによれば、重力波を観測できるだけの技術が備わったこれからが、本当に面白くなるはず。

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