重力波の衝撃 - 数理科学2018-12 ― 2018年11月22日 07:40
待望の重力波に関するまとまった特集。最初の記事「アインシュタインの予言」の前半では、重力波の基本事項を解説。一般向け記事ではもの足りない向きにはちょうどよい。
「重力波が通過すると、進行方向とは垂直な方向に空間が伸び縮みする」P.9
「重力波の振幅は波源からの距離に反比例する」P.10
「また軌道面の方向には、片方のモードだけが放射され、その振幅は上式の半分となる。したがって、軌道面に垂直な方向に相対的に強い重力波放射が起こる。このように連星からの重力波放射は異方性を持つ」P.10
等々、導出過程が端的に示されているのがうれしい。
後半はアインシュタインの試行錯誤の様子を描写。思い込みが激しくやや暴走気味な顛末が人柄の一面を伝える。
ふたつめの記事は、「ブラックホールと重力波」。「5.2 エコー」では、真偽はこれからだが、ブラックホールの内部構造を伝えてくれているのかも、とは興味深い。
重力波の観測は、これまで6例ほど報告されているが、うち5つがブラックホールの連星のもの(P.18)。発見前の記事では、本命は中性子星の連星、とされていたので、驚きがあった。このあたりの事情は、「重力波がもたらす新しい物理学と天文学」が最初の方に説明がある。
この先の本命は、ビッグバンやインフレーションの証拠をつかむことになるらしい。このあたりを、「インフレーションと原始重力波」が解説する。観測の準備が整うのは、2030年代らしいけど。
最近のコメント