泰平のしくみ2014年01月08日 16:56


泰平のしくみ
2014年最初の本は、泰平のしくみ。少し昔、NHKで「お江戸でござる」という番組があり、そこで解説を務めた杉浦日向子の本を好きで読んでいた。彼女の本は、庶民の側からの記述が中心。こちらは、為政者側からの記述である。杉浦氏の本に目を通している人なら、その裏側を知ることができて興味深い。

当時の文章(候文)が数多く例示され、なるほどと思う反面、前半は、例示がちょっとばらばらで、どこに行くのやら、わかりにくいところもあるが、だんだん調子を上げる。それにしても、改めて読むと、候文は、文がひたすら連なり論理を展開していくので、なんともわかりにくい。近いのでは、講習で習った特許の文のよう。

さて、最後は、遠山の金さんが登場し、財政立て直しのために倹約をすすめる幕府の上からの改革とたたかう。金さんに限らず、江戸や幕領を治める行政官は、地域の繁栄により、人心の安定を図ることで首尾一貫していたようだ。このあたり、デフレはいかん、景気がよくないと人心も前向きにならないという、昨今のアベノミクスに通じる。それにしても、行政も商人も、その振る舞いが今の私たちと驚くほど似ている。社会のベースは、維新や大戦を経てもかくもしぶとく継承されるものか。

本書から外れるが、結局、幕府の改革は大きな成果を上げられない。このあたりの事情も現在と同じか。当時は、このあと、ぐずぐずと明治維新に向かうのだが、さて私たちの未来は。

時の地図2014年01月08日 17:28


時の地図
H.G.ウェルズへの最高のオマージュとして賞賛された作品。購入したのは出てすぐだから、随分、寝かせていた。物語の語り手がずいぶんとしゃしゃり出てくるのが、ちょっと苦手。ウェルズへのオマージュといっても、最初のうちは見当が付かない。どこに連れて行かれるのか、不安のまま。最後、100ページほどになってから、一気に展開する。

読み終わってみれば、確かにおもしろい。とはいえ、アイデアだけなら、昨今のラノベあたりもずいぶん凝ったものがあるから、それほど驚かない。ウェルズやヴェルヌの作品に傾倒した人なら、より楽しめるはず。ウェルズ本人が読むことがあれば、きっと楽しんでくれるはず。