働き方改革の実現に向けて - ジュリスト2017-122018年09月16日 13:35


ジュリスト2017-12

特集は、先に法案が可決された「働き方改革」。時論では、大阪市のヘイトスピーチへの対処に関する条例。バランスが実に難しい。法が生まれている現場そのもの。連載「不動産法の最前線」では、賃借人の債務保証について。国交省の「家賃債務保証業者一覧」の在処は知っておきたい。裁判官に聴く訴訟実務のバイタルポイントの8回では、知的財産訴訟のその2。TV会議や模型が活用されている。裁判の現場は思った以上に変わってきている。

特集では、労使双方の弁護士を交えた鼎談と、企業の人事部、派遣企業に労組の面々が揃った座談会は現場感が高く、読み応えがある。

労働者側の弁護士から、「労働組合が長時間労働削減に取り組む自主的な姿勢が弱い」、「非正規労働者の組織率は低く、非正規労働者が抱える問題をほとんど知らない、関心がない(P32)」、という弁がある一方、

UAゼンセンの方からは、「組織人員は172万人になり、そのうち、およそ100万人が短時間組合員で、いわゆる正規でない方(P36)」、とあり、業種や規模により差がある様子。

「無期転換ルール」
実際にやってみたところ、「無期雇用になり、雇用が安定すること、それだけで満足してしまう社員が増えてしまった(P38)」事例が示され、働く側のニーズとのアンマッチがある、ステップアップに向けた動機付けがいっそう必要になる。

また、「学生たちを中心に、週間でものを考えないで月間でものを考えるように変わって(P39)」きており、「自分の都合のいいようなタイミングで働きたいときに働くということになれてしまい」、いざ無期の社員として働き始めると、その大変さに気づく。

「労働時間規制」
残業時間を短縮するために営業時間を短くしたところ、無理すれば勤務できる長さになったために、「マネジャーも人が足りなくて、よそに応援を頼むために頭を下げなければいけないのだったら、自分が身体を張ればいい(P46)」となって、かえって残業が増えた、と苦労話。身に覚えのある話。制度設計は難しい。

「有給休暇」
小売と飲食の人事の方が年に5日前後の取得という。製造業はこれよりも多い。派遣協会の統計では、取得率は8割を越えている(P47)。業種や従業員の立場によって差が大きい。休むとお金がかかる、というのもあるようで、休み方を身につけるのが課題。

「裁量労働制」
「使いこなせる社員がいるか(P49)」がポイント。自己管理で所定労働時間内に仕事を終わらせる能力が前提で、職場であふれた仕事を拾っていてはきりがない。拾わせる職場を作っているようだと、議論はもめる。経営スタイルの変革、経営革新(P64)が伴わないと、悲しい職場が増えるばかり。

どんな制度を作っても、それをよりよく活用しようという人もいれば、制度の隙間をついて利ばかりを求める人もいる。そういう営みが激しく相克するのが、労働法の世界。こればかりはなかなか変わらない。