景品表示法の現状と課題 - ジュリスト2018年4月2019年02月10日 13:34


ジュリスト2018年4月

特集は、「景品表示法の現状と課題」。「eスポーツ大会における賞金提供と景品規制(P.40)」では、話題となったeスポーツの賞金をめぐる議論を取り上げる。発端は、H29.7の日経電子版の記事。本論を読む限り、よほどのことがないと、公取や消費者庁が出てくるようには思えないが、疑義があると企業は手を出しにくい点に一石を投じたか。

冒頭の判例速報「プロダクト・バイ・プロセスクレームと明確性要件」では、東洋ライスの特許(金芽米かな)をめぐる事件を取り上げる。製造方法によってでないと、特許対象を明確に出来ない場合の苦労がわかる。

新連載「働き手・働きかたの多様化と労働法」がスタート。初回は、「働き方改革と労働時間法制の課題(P.56)」。働き方改革法案は、労使の妥協の産物であり、双方に課題が多く残る。現状は人手不足。対策として、設備に投資するも、人に投資するも、見極める経営者の能力向上こそが必要。そうでないと、生産性向上はなかなか得られない。

「時の判例」では、「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否(P.78)」の最高裁大法廷の判決を取り上げる。刑罰は、重大な結果をもたらすだけに、処罰範囲の明確化が必要であるのに対し、対象によっては、その時代の「社会の受け止め方を踏まえなければ、処罰対象を適切に決することが出来ないという特質がある(P.80)」。この両方の要請を踏まえ、どう判断していくか、難しい判断に取り組んだ事件。

事件自体にもいろいろ考えさせられるが、この先、社会的な認識の多様化がいっそう進むと、被害者、加害者共に納得のいく判断が難しくなっていき、刑罰の社会における役割が果たされにくくなっていく、とも心配になる。

「うつ病を理由に退職した社員に対する損害賠償請求の違法性(P.118)」は、退職に対する嫌がらせ事件。訴訟にまで至るとは、両者の間によほどの確執があったのかもしれないが、判例からはそこまでは読み取れない。しかし、実際に、月収20万円ほどの従業員に1000万円を越える損賠を求めて訴える経営者がいるというのは、勝っても負けても、勤め人には悩ましい。人付き合いには、やはり慎重に。