山家集 (角川版)2020年06月04日 07:36


山家集

西行の歌集。1552首。おくのほそ道つながり。Kindle版では、分量の多いのに驚くが、歌集の本体は6割ほどまで。校訂と補注が2割。解説と地名人名一覧に句のはじまりで引ける索引で2割。補注が充実しているのはうれしいが、Kindleではいったりきたりが大変で、紙の本が優位。

西行は12世紀の人。歌集の前半は、春夏秋冬で季節の風景を詠む。次いで、恋、雑、諸々とつづく。当時の時世故か、若くして出家した本人の人生観故か、後ろ向きな句が多いが、ちょっとふざけた感じの句も紛れる。雑では、当時の時事も詠み込まれる。場所は、畿内中心だが、奥州平泉、伊勢、讃岐、などにも及ぶ。そのときどきの風景や感興をスナップショットのように切り取る。今ならば、カメラ片手にスナップショットをとり、後日、整理しながらそのときどきに思いを馳せる、そんな読後感。

先行して、おくのほそ道東関紀行、海道記などを読んでいたのが、役に立つ。それぞれの文面や地図から土地の様子を思い描いていたことで、句から浮かぶイメージが実感を伴ってくる。実際には、因果は逆なのだけど。例えば、つぎの一首。

1307 いつとなき思ひは富士のけぶりにてうち臥す床や浮島が原

思いが立ち上るのを富士山頂からの煙に例え、臥し寝の床を富士から沼津にかけての海岸沿いの低地帯に例える。