TPPと法改正 - ジュリスト2019年2月2021年01月18日 07:38


ジュリスト2019年2月

特集は「TPPと法改正」。著作権や商標権まわりを扱う。

著作権の保護期間を70年に(P.23)。
主張していた米国がTPPから離脱したが、凍結せず、そのまま立法化。EUとの交渉で合意していたからかも。保護期間の最終日は12月31日。暦年主義で、翌年から起算。

配信者等に対する二次使用料請求権は、TPP11の発効に伴う改正法で付与(P.33)。
とはいえ、ダウンロードした音源は、約款で配信を不可とするものが多く、配信業者はレコード会社から直接入手することが多い。インディーズレーベルなどが主な対象となりそうだが、配信一覧の管理がされておらず、課題。

著作権違反の非親告罪化(P.34)。
対象はデッドコピーに該当するものに限定(P.36)。従来も告訴なしで操作が行われた例が存在(P.38)。裁判では、検察官が告訴状の証拠調べを請求しないと区別がつかない(P.39)。悪質な事件なら告訴が得られるはずであり、今までとあまり変わらないか。公訴権濫用のケースが出てくるかどうか。

判例速報では、マリカー事件の地裁判決(P.8)。
不競法についての請求で救済されるとし、著作権法についての判断はせず。使用許諾を誤認させるとして、使用差し止め等を認める。

連載「新時代の弁護士倫理」。
米国には、法廷侮辱罪など、弁護士にも訴訟上の制裁があるが、日本にはそのような制度はない(P.61)。懲戒や、相手方からの損賠は請求されうるが。高い行動規範が期待されている。

時論「日本における「成年」制度の成り立ちと社会的意義」。
20歳、というのは、1876年(明6)の太政官布告に始まる。この布告は、なんと、大宝律令ないしは757年の養老律令によるという(P.79)。これら律令の運用は、平安時代には形骸化。江戸の頃は、地域ごとに、地域の事情に合わせた運用。明治になり、20歳と決めたものの、世間一般の認識としては、徴兵年齢としてのもの。成人年齢として定着したのには、戦後、成人の日の果たした役割が大きい。20歳で成年、というのは、意外と、大層な根拠はなく、最近になってからのもの。

最高裁 時の判例。当たり馬券の払戻金は、雑所得か一時所得か(P.96)。
ソフトウェアによる機械的な売買ではないケース。それでも、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」と認められ、雑所得と判断。偶然性の影響を減殺するために長期間にわたって頻繁に馬券を購入する、態様が認められる。

経済法判例研究会、ガチャの景表法違反による課徴金納付命令(P.99)。
「窮極進化」の対象が一部なのに、「進化」を混ぜて、紛らわしい表示。「ガチャ」商法極まれり。

労働判例研究、「ベネッセ顧客情報漏洩刑事事件」(P.119)。
IT業務の請負が、4段にわたる。漏洩を起こしたのは、最後の4番目の請負会社の従業員。事件はともかく、これでセキュリティを確保しようというのには、無理がある。世間はようやく、DXだ、セキュリティだと、声を上げ始めているが、こんな契約や体制では、中身は伴わない。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://c5d5e5.asablo.jp/blog/2021/01/18/9338729/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。