エスケヱプ・スピヰド 六2014年08月03日 11:10

仕事が忙しくてへろへろな毎日には、ラノベがよい薬になった。コミックではなく、活字が欲しいが、密度の濃い文章は頭が受け付けない、そんな時がある。忙しさが落ち着き、そんな状態を脱し、しばらくすると、だんだんと、ラノベから距離を置けるようになる。

エスケヱプ・スピヰド 六
さすがに、軽すぎるノリの本は手に取ることが少なくなったが、それでも幾人かの作者のシリーズは続けている。エスケエプ・スピヰドもその一つ。あとがきによると残り一巻。一つ手前の六巻では、これまで描かれたいくつもの人生が一所に集まってきて、最終巻の盛り上がりを予感する。

時は、昭和101年。20年ほど前、大きな戦争が両軍の疲弊からなし崩し的に終了し、ようやく復興の途についた矢先、再び戦端を開き、決着を付けようとする勢力が現れ、復興の中で人間性を取り戻しつつある主人公達を巻き込んでいく。背景は歴史改変もののようだが、その味わいはあまりない。兵器として第二の生を得た兵士の、戦後の葛藤の物語。軍事、科学用語を駆使した畳みかける勢いのある描写が心地よい。SFとして読むと、どうか?という感じだが、まあ、これだけ読み手を楽しませてくれるのだから許したい。

本屋さんでコミックや文庫の片隅にちょこっとあったラノベも、最近では堂々と複数の書架を占有するまでになった。ロードス島戦記からの読者には、隔世の感。疲れた頭向けのものから、本格的なものまで、内容も充実度も千差万別。従来のジャンルに閉塞感も感じられる中、内容的にも読者層についても、新陳代謝の役を担っている。

東京駅で峠の釜めし2014年08月07日 17:21


東京駅で峠の釜めし
昨年の今頃、横川で峠の釜めしをいただいたはずだが、今回は東京駅で入手。店内に無いなと店を出ようとしたら、正面で販売中。

駅弁屋 祭
売店は、改札内の駅弁屋 祭。丸の内と八重洲の中央口を結ぶセントラルストリートのやや丸の内側。

先に上野駅の駅弁屋 匠を探したが、あいにくと置いてなかったので、東京駅まで戻ってきた。タイムセールとのかけ声だったので、お昼時にあわせて店頭に並べていたのかもしれない。いつでもあるわけではなさそう。

峠の釜めし
中身はいつもの通り。お弁当といいながらも、味付けが濃すぎないのがいい。

峠の釜めし 容器
さて、今回の目的は、中身では無くて、容器。このふたの大きさと重量感を、ちょっと試してみようと思う。

釜めしのふたは漬け物石2014年08月09日 11:13

さて、峠の釜めしのふた。浅漬け用の漬け物石にちょうどよいのでは、と目論んでいた。スーパーで売っている一夜漬け器はちょっと小さすぎ。もう少しいっぱい作ってばりばり食べたい。

釜めしのふたは漬け物石
手元の密閉容器で試してみる。岩崎工業のスクリュートップキーパーの1200ml。高さが10cmくらいで、冷蔵庫の浅い段にちょうど収まるサイズ。試しにきゅうりを3本漬けてみる。上の絵は、一晩おいたところ。この様子なら、5~6本はいけそう。

内径13センチ
密閉容器の内径は13cmほど。釜飯のふたの直径は12cm。重さは、200グラム。ちょっと取り出しにくい。もう少し重くてもいい。まあ、しばらく試してみる。

近世封建社会の基礎構造2014年08月10日 18:36


近世封建社会の基礎構造

朝尾直弘著作集、2004年の刊行。10年ほど、本棚に眠っていた。第一巻、9400円。今なら買えない価格。しかも、予約出版。それほど歴史に関心が高いわけでなし、なぜ、予約してまで入手しようとしたのか。雑誌「図書」の案内がそれほど魅力的だったのか、何か文章を書くにあたり歴史の見方をしっかりさせておきたいとでも思ったのか。ともあれ、今、読むことができる幸せ。

第一巻は、豊臣から徳川の治世が確立する頃の畿内の農村のありよう、舟運を核とした流通、経済の要の地位を確立していく大阪、幕藩によるこれら支配のありよう、を論ずる。論文自体は1960年代のものなので、説は古くなっているのかもしれないが、「歴史に学ぶ」とはどういうことか体感させてくれる。

・小農民層が、技術革新を背景に生産力を高めるとともに力をつけ、支配的地位にいた庄屋層と肩を並べていく流れと、幕府が地場の有力者を介した支配から、より直接的な支配を目指す流れが呼応して進んでいく。幕府の政策により、世の中がこう変わった、という説明がよくされるが、それは一面でしかない。

・田畑の開発や、水利事業などにおいて、民間活用はこの時代から採用されていた。これらを通して実力をつけた新興の大企業(商人)が、地場の企業(実力者)を駆逐する流れも、今に通じる。これに、政府(幕府)が積極的に介在することにより、政策目的(新秩序の構築)を達成しようと努めていたことも同じ。

・関ヶ原のあと、畿内以西の支配を幕府はすぐに確立できたのではない。今で言うと、徳川が豊臣にM&Aを仕掛け、吸収合併していくがごとし。トップはすぐに入れ替えるものの、現場の責任者は残し、業務は支障なく継続させる。有力者を送り込み、十分な権限を与えた上、組織改革に乗り出す。古い考えから抜けない責任者は徐々に更迭する。新しいやり方が浸透したら、有力者を廃し、中央からの統制を強化し、組織の一体化を進める。

実証として示される候文の意味を取るのは、やや骨が折れるが、歴史好きの高校生くらいから、理解できる内容と思う。出来事の羅列をたどるので無く、物事の関係を読み取っていく学びは、スリリングであるし、今を生きる上でも智慧になる。願わくは、このような専門書が、図書館を丹念に回る一部の人の読み物に止まらず、安価で人目につくようになり、多くの読み手を得ることだが。

今日は口数がすくない2014年08月13日 08:02


今日は口数がすくない

2008年から2011年にかけ、岩波の「図書」で連載があった。最初は、米軍の置き土産のペーパーバックの話から始まったが、最後の方は「小説を書くこと」をめぐる話になっていた。それでは、ということで、著書を探してみると、近作はエッセーが中心で、小説はことごとく版切れ。古書で見つけたのが、本作。7つの短編。男女の物語。

短い文をつなげていく文体が心地よい。仕事柄、小難しい内容をわかりやすく伝える必要から、一文は短く、を心がけているので、文体の選択にまず共感する。小説には向かないような気がしていたが、実例を見せられると、さすが、と納得せざるを得ない。

長い文の場合、どう決着がつくか予断を許さない。心の中でいったん留め置いて、句点を待って、全体を再構成し、浮かび上がったイメージを先に送る。短い文の場合、いったん留め置く過程を経ず、どんどん送り、その先でイメージができあがっていく。読み手の感覚もずいぶん違う。

改めて、Amazonを探すと、Kindle化が進み、小説の入手性は良くなっている。ここは素直に喜んでおく。

現代マンガの冒険者たち2014年08月14日 10:47

アニメにもなっている月刊少女野崎くんの2巻を読んでいたら、友人と一緒にラブレター(果たし状)を見つけて慌てるヒロイン(一応)の千代のギャグ顔が気になる。デフォルメの仕方、慌てる口の歪んだ線。本作の絵柄は、いわゆる正統の少女マンガのそれ。
少女マンガのギャグ表現のルーツはどのあたりなのか。少年マンガだと赤塚不二夫あたりになりそうだが、絵柄全体がギャグ表現というわけで無く、いつもは美少女、美男子の絵柄が、突如、くずれる、この効果を狙ったのは、誰からだったろうか。

現代マンガの冒険者たち

そんなことを気にして見つけたのが、現代マンガの冒険者たち。5つの軸で、マンガとマンガ家の系譜を明らかにしようとする。ギャグマンガの系譜、少女マンガの系譜も取り上げている。結論から言うと、最初の疑問のギャグ表現の系譜は解明されなかったのだが。

一言でも触れられているマンガ家は500人を越えるくらい。その中で、著者が主要と考えるマンガ家を、それぞれの系譜における立ち位置、何が革新的であるのか、何がその後に続く作家に影響を及ぼしたのか、論じていく。

読み終わって改めて感じるのは、取り上げられた幹や重要な転換点にあるマンガ家の本をほとんど手にしていないこと。マンガをよく手にするようになったのは90年代以降で、周辺系ばかりを漁ってきたいせいか、80年代以前や大河の中央部分の記述はかえって新鮮。少し手を広げて読んでみようという向きにはよい案内になる。

たくさん取り上げられているマンガとマンガ家だが、実際の作品を一コマでも掲示するものは限られる。そんなとき、電子書籍サイトの立ち読み機能は役立つ。多くの作品では、数ページ分参照できるので、絵柄やお話作りの雰囲気を確認できる。

それでも、重要とされるマンガ家の作品は、意外と電子書籍になっていない。eBookJapanは、先日、マンガ販売ラインアップが10万冊を越えたことを発表したが、まだまだ。
電子書籍化については、作家本人が良しとしない場合もあるだろうが、充実を期待したい。このような案内書を片手に多くの作品を渉猟することができるのは、電子書籍ならではの楽しみ方でもあるし。

畿内からみた幕藩制社会2014年08月17日 10:49

朝尾直弘著作集の第二巻。19篇の短めの論文を収める。第一部が幕末を対象にしたもの、第二部が畿内を中心とした実証論文、第三部が近世史研究に関するもの。

畿内からみた幕藩制社会

第二部の実証論文が興味を惹く。

「十七世紀における産業構造の特質」
1630~40年代に刊行された俳諧書から、諸国の名産を記載するくだりを紹介する。今でこそ、日本全国各地の名産品には多種多様なものがあるが、当時、畿内を別とすれば、作物や商品の流通は限られていた様子。おそらく、地産地消が中心で、人も物も行き来は限られ、京都や大阪を遠く離れた人には、住んでいる地域が全てであって、日本全国を意識することなどなかったのではないか。今の私たちとは、意識の持ち方もずいぶん違ったであろうと思わせる。

「上方からみた元和・寛永期の細川藩」
この当時から、税収以上の支出をもって国の財政を運営するのが常態であったというのには驚く。藩の力を削ぐために幕府が支出を強要した面はあるのだろうが、資金を融通する銀行の類いが業として成立し、そこに資金を投ずる小口の投資家が多数いたというのは、現在に通じる。藩の方も、トヨタやソニーではないが、資産運用が重要な利益源であったようだ。

金星と木星2014年08月19日 05:32

8月中旬、金星と木星が、大接近するという。暑さで目が覚めたので、ちょうどよい、出掛ける。

金星と木星
4時10分頃。まだ暗い東の夜空に明かりが二つ。

金星と木星
4時20分頃。少し明るくなってきた。鳥も飛び交う。

金星と木星
4時30分頃。天頂付近の月を除くと、視認できるのはこの2つの明かりくらい。

朝焼け
金星が見えなくなる頃、朝焼けが東の空を染める。このあと、日の出はちょうど5時くらい。