朝鮮燕行使と朝鮮通信使 ― 2016年09月14日 17:55
大部の本。700ページあまり。参考文献の解題や注もたっぷりあるので、それを除いても500ページあまり。2015年刊。名古屋大学出版会。あとがきによると、25年ほどの間の論文をとりまとめたもの。中国(明、清)と、朝鮮、日本(および琉球、ベトナム)の間の外交使節の記録をたどり、当時の東アジアの文化の状況、交流とそれを受けての変化の有様を描き出す。これまでの知識や思い込みの大幅な入れ替えを求める一冊。
大学の頃、授業で燕行使の記録の一つである朴趾源の熱河日記を取り上げたことがあった。通信使については、近世史で少し触れられていた。それらの比較はなかなか面白そうだ、という期待は、よい意味で大きく裏切られる。限られた文化交流がどれほど思考を隘路に閉じ込めてしまうのか、柔軟性を失い変化に対して脆弱になるのか、離れているのに同じような発想が同時期に生まれることがあるのか、一度始まった交流がどれほどお互いを変えていくのか、後の歴史を知る身には興味は尽きない。
そして、数百年にわたり、話し言葉は通じずとも、書き言葉としての漢語が地域を結びつけていたことも。
取り上げられている中で読んでみたくなるのが、洪大容の記録。ただし、こちらは手に入れやすいものはなさそうなのが残念。
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