震災特集、電力託送料金、ヤフーへの法人税更正処分を巡る争い2017年01月27日 18:15


ジュリスト2016年9月

●特集は、「震災と企業法務」。冒頭の鼎談では、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震等での経験や法整備のちぐはぐさが語られる。

・被災者生活再建支援法では、例えば、たばこ屋さんの2階の住居は支援するが1階のお店は支援しない。
・災害のエキスパートは消防だが、消防法では、法整備がほとんどなされていない。
・災害時は個人情報保護法の例外になるはずが、実際に災害が起きるととっさの判断ができず、遺族や負傷者の家族からの問い合わせを拒絶。
・おなじく、要援護者情報の入ったUSBを担当職員が首を覚悟で外部提供して避難に成功したが、本来問題ないはず。
・避難所で物資を手際よく運んでいたのは自衛隊員だが、指示をしていたのは宅配業者の従業員。
・行政が支援物資を現地に送り込んだが、仕分け・配送の専門家がいなかったため、倉庫に保管したままに。
・石油が足りないと言うばかりで、具体的な場所や量を指定した発注をしていなかった。

形ばかり整えても、いざというときには役に立たず。現場の臨機応変ぶりを美談にして終わらせず、普段からやっておくことがある。

●「霞ヶ関インフォ」では、電力託送料金を扱う。電力の小売り料金は、家計支出の約4%。そのうち、3~4割が託送料金。その8割ほどが、設備費用。家庭向けと産業向けの配分は、ピーク時の使用割合で行うが、家庭向けの割合が増える計算方式。夏場の帰宅時の一斉にエアコンを使う時間帯の電力量を選ぶようなことになるらしい。さらに、原発の費用のうち後で見つかった未回収分を託送料金に入れることになり、複雑に。今後の送配電分離と、それぞれの料金算定の議論を見守っていく必要がある。

●このところの判例欄を賑わしているのが、法人税の更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分に対し、ヤフーが取り消しを求める事案。ひとことで言うと租税回避を巡る事件。

・ヤフーの代表取締役社長が、多額の未処理欠損金のある子会社の取締役副社長に就任。
・続いて、ヤフーは、その子会社を合併。
・その上で、ヤフーは、子会社の未処理欠損金を、損金として処理。

最高裁まで争われた結果、この最初の副社長就任の行為が、もっぱら法人税の負担の減少をねらったものと判断された。

営利企業として利益のためには、法の隙間をつくのは当然、むしろ、株主に対する義務と考える向きもあるが、退けられた。前号のタックスヘイブンの特集では、コーポレートガバナンスの観点からもとるべきではないとの論があった。確かに、CSRやコンプライアンスをうたう一方で、他の納税者に負担を押しつけるのは、一貫しない。

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