移動迷宮 - 中国史SFアンソロジー ― 2023年03月31日 18:50
中国史を題材、ということで手に取った一冊。
全体の印象は、若い。
これから様々な作品を下敷きに書き継がれていき、いろいろなお約束も生まれ、複層的な言葉の世界が編まれ、成熟していくであろう、その始まりに立ち会った感じ。
中国史SFという点で、一番それらしいのは、冒頭のフェイダオの「孔子、泰山に登る」。儒教の本を読んでいてよく引かれる一節などが登場し、くすぐられる。
こなれたSFらしさ、という点では、パオシューの「時の祝福」。ウェルズのタイムマシンのオマージュともいえる逸品。
中国史SFの可能性を感じさせるのは、末尾を飾るシアジアの「永夏の夢」。中国の人でなければ書けないだろう作品。
日本に比べれば、歴史も地域性も広大な国なだけに、宝の原石はまだまだたくさん埋まっているはず。できれば、文化の転換点を担う人物や時代を取り上げた作品を読んでみたいもの。
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