自然と人生 ― 2017年12月07日 15:04

「みみずのたはこと」に続き、「自然と人生」。
Kindle版。角川文庫の復刻版。イメージスキャンしたもので、字が小さめで紙面の傷みに由来するノイズもあって、小さい画面では少々読みにくい。
随想だけでなく、小説の小編をいくつか含む。随想は、みみずのたはこと、よりは少し前の時期か。大正期のものはなく、明治期のもの。
自然の描写では、逗子付近のものが多い。富士、伊豆の山並み、相模灘。特に、嵐を迎え、海沿いの民家が波風に追われる様子を描く、「海と合戦」はなかなか。事態は深刻なのに、なにか楽しげな人びとの様子をユーモアを交えて描く。
植物では、百合が好きとあって、よく登場。なかでも白百合。
「写生帖」は、どちらかというと人事。明治期の世情が垣間見える。
「灰燼」は、西南戦争に巻き込まれ、正義が揺れた時代に翻弄される一家を描く。世の中が大きく変わろうとしている時代には、いつでも起こりそうな悲劇。
読んでみて思うのは、この頃は、漢籍の知識が物書きに共通の基盤だったのだということ。物事の形容に漢詩文のフレーズが重用される。漢文のテキストや古文真宝を読んでいるせいか、文字面から受けるイメージが違ってきている。今は基盤が薄く広がってしまい、かえって深い感興を催しにくくなっているのかも。
以下、目次。
※ページは本文中のもの、Kindleの位置表示ではない
※適宜、新仮名遣いにしている
※適宜、新仮名遣いにしている
15 灰燼;小説
45 自然に対する五分時;随想
47 此頃の富士の曙
48 大河
49 利根の秋曉
50 上州の山
51 空山流水
52 大海の出日
53 相模灘の落日
54 雑木林
56 檐溜
56 春の悲哀
57 自然の声
59 栗
60 梅
60 風
61 自然の色
64 山百合
67 朝霜
68 蘆花
69 海と岩
70 榛の木
70 薄
71 良夜
72 香山三日の雲
77 五月の雪
77 香山の朝
78 相模灘の水蒸気
80 富士の倒影
81 四ツ手網
82 田家の煙
84 写生帖;随想
87 哀音
88 可憐児
91 海運橋
92 桜
93 兄弟
95 吾家の富
97 国家と個人
98 断崖;小説?
103 晩秋初冬
105 夏の興
110 雨後の月;小説?
126 湘南雑筆;随想、ほぼ1年を巡る
129 元旦
129 冬威
130 霜の朝
131 伊豆の山火
131 霽日
132 初午
133 立春
134 雪の日
134 雪の明くる日
135 初春の雨
136 初春の山
136 三月節句
137 春の海
138 彼岸
138 伊勢参宮
140 磯の潮干
141 沙濱の潮干
143 花月の夜
143 新樹
145 暮春の野
146 蒼々茫々の夕
146 夕山の百合
147 梅雨の頃
148 夏
149 涼しき夕
150 立秋
150 迎火
151 舟を川に浮かぶ
151 夏去り秋来る
152 秋分
153 鰺釣り
159 海と合戦
169 秋漸く深し
169 富士雪を帯ぶ
170 凩
171 凩の後
172 月を帯ぶ白菊
172 暮秋
173 透明凜然
173 秋晩の佳日
175 時雨の日
176 寒星
176 寒月
177 凩の湘海
178 寒樹
178 冬至
178 歳除
181 風景画家コロオ;フランスの画家コローの伝記
※註と解説は未収録
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