みみずのたはこと2015年10月13日 22:07


みみずのたはこと

徳冨蘆花の明治の後半から大正に掛けての日記、随想。岩波文庫では上下2巻。それなりの読みでがある。漢字の使い方など、今とは異なるものもあるが、文体は比較的現在に近しい。この時期の文章としては、読みやすい部類。

蘆花は熊本の出。40になって、今の千歳烏山、最寄り駅で言うと芦花公園駅の近くに越して来る。文筆業で生計を立てながらも、農に親しむ生活をはじめる。その日々を綴る。事件の少ない田舎暮らし。葬式を始め人の死にかかわる記事が多い。

村の一年:それぞれの月を取り上げ、街に飲み込まれる前の風物を教えてくれる。江戸とも現代とも地続きの風景。独歩の武蔵野とはまた違った姿。

驟雨浴:すっかり景色は変わったが、秩父の山々から、雷雲が巻き起こり、平野を目指してやってくるのは今も変わらない。待ちに待った雨を全身で喜ぶ姿がほほえましい。

梅一輪:当時、ニューヨークに留学し、看護学校で学び働く中、不幸にも病死した女の生き様を描く。海外に飛び出す意義、厳しさは今も変わらない。

関寛翁:北海道に移住した医師の生き様。まさに傑物。開拓が進む当時の姿を伝えてくれる。

自動車:登場した頃の様子とともに、将来への予感を伝える。

展望台に上りて:京王線を引くときの工事の様子を伝える。地上げはこの頃から。

読者に:あとがきに相当。本書刊行後、十数年経っての現況も。

以下、青空文庫版は、目次がないので、Kindleの位置番号を付けて備忘とする。

みみずのたはこと
目次(数字はKindleの位置情報)
0002 故人に
0258 都落ちの手帳から
 千歳村
0353 都落ち
0438 村入
0501 水汲み
0567 憶出のかずかず
0763 草葉のささやき
 二百円
0831 百草園
0936 月見草
0967 腫物
1180 わかれの杉
1240 白
1403 ほおずき
1520 碧色の花
1592 おぼろ夜
1635 ヤスナヤ、ポリヤナの未亡人へ
1824 安さん
1909 麦の穂稲穂
 村の一年
2452 媒酌
2516 蛍
2563 夕立雲
2619 葬式
2797 田川
2864 驟雨浴
2966 村芝居
3031 夏の頌
3127 低い丘の上から
3281 ひとりごと
 地蔵尊
3341 水車問答
3391 農
3474 蛇
3614 露の祈
3627 草とり
3684 不浄
3788 美的百姓
3827 過去帳から
 墓守
3984 綱島梁川君
4067 梅一輪
4507 関寛翁
5163 次郎桜
5248 きぬや
5357 命がけ
5456 暁斎画譜
ここまで上巻

5536 落穂の掻き寄せ
 デデン
5584 芝生の上
5602 小鳥
5620 炬燵
5641 蓄音機
5683 春七日
5805 ある夜
5852 与右衛門さん
5939 五月五日
6011 紫雲英
6065 印度洋
6104 自動車
6161 デカの死
6218 ハムレット
6265 春の暮
6298 首夏
6321 憎むと枯れる
6349 麦愁
6368 堀川
6460 ムロのおかみ
6489 田圃の簑笠
6516 つゆ霽れ
6533 有たぬ者
6562 食われるもの
6599 蜩
6623 夏の一日
6671 明治天皇崩御の前後
6788 御大葬の夜
6826 東の京西の京(明治天皇の御始終)
6864 乃木大将夫妻自刃
6923 コスモス
6944 秋さびし
6971 展望台に上りて
7150 暮秋の日
7184 二つの幻影
7218 入営
7253 生死
7302 天理教の祭
7359 渦巻
7389 透視
7446 雪
7532 読者に

7901 附録
7902 ひとりごと
 蝶の語れる
7914 旅の日記から
 熊の足跡
 勿来
7958 浅虫
7977 大沼
8057 札幌へ
8073 中秋
8136 名寄
8166 春光台
8196 釧路
8250 茶路
8314 北海道の京都
8331 津軽
8355 紅葉狩
 紅葉
8434 義仲寺
8474 宇治の朝
8540 嫩草山の夕
以上

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