日本近世史2014年11月09日 21:19

しばらく読んでいた朝尾直弘著作集は、およそ1960年代から90年代にかけての論文を集めたもの。それから20年以上経過している。今日、どのようなことが日本史で学ばれているのだろう。

日本近世史

そこで、現在受講できる放送大学の日本近世史の教材を取り寄せてみた。まえがきに、「小学校・中学校・高等学校の日本史の授業で繰り返し学んできた通史とは異なる視点で」、「日本の近世史を政治史的通史ではなく社会の全体史として叙述する」、とある。大学の場では、このような学びの姿がある程度、浸透していることを感じさせる。

教材の本文の方は、15章からなり、およそ3章で一つの大きなテーマを扱う。

・1-3章:近世の都市
 京の町を扱うので朝尾直弘著作集と重なるが、捨子問題などを扱い、一層視野が広がる。
・4-6章:武家の住む都市領域
 江戸の70%が武家地で、人口も半数程度が武家だったという。バブルの後、景気低迷で開発が減り、発掘が進まないとは皮肉。「リサイクル都市江戸」は、一面は真実でも、他方では使い捨て文化も拡がっていた。
・7-9章:城下町、地域経済
 城下町として萩、商業の中心として山口、干拓事業としての周防大島を描く。大阪との交易で栄えた山口が競合の登場で、内需中心に切り替える話など、地方再生は古くて新しい話題。
・10-12章:農村、漁村、山村
 比較的地元の房総を扱う。いすみ鉄道沿線を再び旅してみたくなる。今度は、しっかり沿線を歩いてまわらねば。
・13-15章:寺院と檀家制度
 お寺は戸籍を冠婚葬祭を担う制度に成り下がった、と流布される「近世仏教堕落論」に対し、事例を元に実態を明らかにしようとする。

「リサイクル都市江戸」にしても「近世仏教堕落論」にしても、刺激的な標語は、それが全てのように語られるが、実態はそう単純でない、そのことをあらためて教えられる。これも歴史を学ぶことで得られることの一つ。