正法眼蔵随聞記2014年09月12日 13:32


正法眼蔵随聞記

文庫版の正法眼蔵は、さすがに手強くて中途のまま。こちら随聞記の方を先に読了。岩波文庫版には、現代語訳はない。古文ではあるが、字体を常用字体にし、読み仮名があり、カナをひらがなに改めてある。古文に親しみがあれば、少々の字引で読める。ただし、仮名遣いは独特なものがある。

末尾の跋語によると、全六巻とも嘉禎年間の記録という。日本史年表によると1235年から1238年にあたる。鎌倉の北条執権のはじめの頃。今から800年弱の昔。僧でない一般の人とのやりとりも多く記録するが、今と変わらないことも多く驚く。

当時がどのような世の中であったかはわからない。書かれていることから察するに、道元らを悪く言う人もいるし、名声を聞いて寄ってくる人もいる。一般にも立派な人はいるし、僧にも名声や富を求める人もいる。そのような人たちと交わりながら、世の中にいろいろな価値観がある中で、自分の信じるところをどう求めていくのか、現実的な言葉で語られる。現実的というのは、状況に応じて、自分で判断することを求めているところ。単純なマニュアルになっていない。このあたりが読み継がれる訳とも思う。

第六巻八から
病も治しつべきを、わざと死せんと思ひて治せざるも外道の見なり。仏道の為には、命を惜しむらくなかれ。亦惜しまざることなかれ。