遊仙窟 ― 2014年09月13日 19:32
唐代の伝奇小説とされる。本文は100ページほど。現代語訳。訳注が100ページほどと充実。さらに、史料として醍醐寺本の影印が100ページほど続き、25ページほどの解説。今は版切れ。神田の古書店で入手。本文だけであれば、一日もあれば読める分量。
物語は、西安の西の地(訳注によれば陝西省宝鶏市隴県のあたり、西安からは250kmほど西)に勤めていた主人公が、蘭州を越えて西寧のあたりに赴任することになる。その旅の途中、険しい道すがら、神仙の住むといわれる場所にたどりつき、美しい女と出会い、宴を持ち、一夜をともにし、別れるまでを描く。その女と兄嫁、旅の主人公、三人の詩を介した駆け引きが面白い。
中国では失われたが、伝来した日本では大切にされ、山上憶良や藤原公任ほか、引用しているとのこと。おそらく、中国ではすぐに読み捨てられるような類いのものだったが、描かれた世界のきらびやかさに当時の日本の人はいたく憧れたのかもしれない。小さい頃、初めてのパソコン雑誌やサークル誌に夢中になり、捨てられなくなったものだが、そのような想いだったのかも。
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